30年以内に、マグニチュード7クラスの、首都直下型地震が来る!
と言われていますが、災害時に断水した場合、必要な非常用水を確保するため、
防災井戸の重要性が高まっています。
東京都地域防災計画としてのライフライン
復旧目標は、
上下水道が30日 電気が7日と
されています。
そこで、災害時に備えるために
水の備蓄として、最低3日分から
1週間程度が必要とされています。
生命維持に必要な最低水量は、一人あたり1日3Lとされています。
飲料水は、備蓄と各地にある応急給水槽、給水所で確保できると
期待したいところですが
この水量は、飲料水だけのお話です。
生活用水の事は、考慮されていません。
では、生活用水はどうするのでしょうか?
いまいちど整理すると
人間が最低限の生活をするために、1日に必要な生活水量は
『飲料水に3~5L、調理に10L、清拭(せいしき)に15L、トイレに20L』の
合計 なんと!!
【約50L】が必要と言われています。
*せいしきとは、蒸しタオル等でからだを拭くことです。
その中でも最も必要とされているのがやはり、
【トイレ】*バケツ2杯 1杯約8L~10Lとして2回分ですね。
また、
火災消火のための消火用水としても水は必要となります。
お風呂での溜めおきや、雨水などで、水道が復旧するまで凌げるでしょうか?
東日本、大震災被災者の方から、聞いたお話では
寒い中、給水所に5時間並んだが、ポリタンク1つ分の水も確保出来なかった。
水節約のため、トイレは1日1〜2回に我慢し、身体はタオルでふき、
歯磨き粉を使わずに、歯磨きしたとお聞きしました。
給水所では、たいへんな混雑・混乱が予想されます。
お住まいの場所にもよりますが、給水所まで歩いてどの程度かかるのか?
水を持っての移動となると・・・心身ともに疲労が重なると思われます。
水1リットルで1キログラムですからかなり負担が大きいですよね。
更に、先の震災での実態についてご報告します。
阪神淡路大震災では、死亡者6,434人のうち922人が震災後に亡くなり、
新潟県中越地震では51人中35人が震災後しばらく経ってから亡くなっています。
なぜ無傷 で生き延びた人が命を落としてしまうのか。
避難生活中に死亡する大きな原因のひとつに「トイレ問題」があります。
避難所のトイレ数は、避難民の数に比べて、圧倒的に少なかったそうです。
阪神淡路大震災では30万人以上の人々が学校などに避難、神戸市内の避難所 は3,563ヶ所、
その内仮設トイレが設置されたのはたった1,033ヶ所。
震災の影響で水道が断水し、避難所の水洗トイレは使用できない状況でした。
仮設トイレまたはトイレが無かった人はどのような行動をとったのか・・・
◇ 水は出ないがみんなが用を足し、その上にまた用を足した のです。
当然トイレは、許容量を超えて溢れかえり、用を足せる状態ではなくなってしまいました 。
◇ 水もないし仮設トイレもなかったので被災者のほとんどがトイレを我慢していた 。
◇ 大半の人が水分摂取をなるべく少なくしてトイレに行かないようにしていたそうです。
避難民の行動 は、
トイレに行きたくない から水分を摂らなくなる →水分を控える ことで脱水状態 となり血栓ができやすくなることで血栓症になる可能性が増えた。
阪神淡路大震災の地震後に亡くなられた方の死因は、 心不全、心筋梗塞、脳梗塞、エコノミークラス症候群(肺塞栓)など、
3割の人が血管を詰まらせる病気が原因 だったと報告があります。
生活水さえ確保できれば、トイレを気にすることなく水分を補給でき、また自宅の安全が確認できれば、断水状態でも十分に暮らすことができるので、血栓症になる確 率も大幅に減少させることができると
考えられるそうです。
これを教訓として、東京都内のお客様は
防災井戸を作り
電動ポンプと手押しポンプ併用の設備を設置したそうです。
一方で、阪神淡路大震災被災者の方から聞いたお話では
断水したため、自宅にある井戸へバケツを放り込んで、井戸水を汲み上げて、地域の皆さんで助けあって生活用水などに利用できたので、
たんへん助かったとお聞きしました。
また、火災が発生した際に、井戸水をバケツリレーで地域の皆さんが力を合わせて、
消火することが出来たといったお話もお聞きしました。
以上のことから防災井戸の重要性・必要性がおわかり頂けた事かと
思います。
では、練馬区内における防災井戸について
ご報告します。
練馬区内には
練馬区と協定を結んでいる【防災井戸】が23箇所あります。
主に町会井戸や区立や都立の公園内にあります。
100m前後の深井戸で、水質検査も毎月実施しており、飲料水として使用できるものです。
停電時を想定して、練馬区が用意した非常用発電機も設置されており、
定期点検メンテナンスも実施しています。
次に、
個人宅を中心に練馬区と協定を結んでいる【ミニ防災井戸】が
約500箇所あります。
9m程度の浅井戸で、協定が結ばれると練馬区にて手押しポンプを設置し、故障しても無償で修理してくれます。
残念ながら、飲料水としては使用できませんが
生活用水として、そして消火用水としての利用が出来ます。
なお、現在、新規協定の受付は一時中止しています。
理由は、コロナ禍で予算とのかねあいもあり
新規の手押しポンプが設置出来ないとの事です。
それから
避難拠点となる小中学校に【学校防災井戸】が98箇所
あります。
25m前後の浅井戸で電動ポンプが設置されています。
備蓄庫に発電機があり、災害時の停電時にはポンプを運転することができます。
但し、こちらも飲料水としては使用できず、生活用水として利用します。
井戸水を飲料できるものと期待される方も多いですが、
生水のまま、飲適として水質検査をクリアするのは難しく
実態としては生活用水としてトイレや洗い物などに使われることが多いです。
もちろん、簡易濾過キットなどをご用意して飲料水として使う備えをしているマンション管理組合の皆様や個人の方もいらっしゃいます。
ここで参考情報として
東京都内にある防災井戸数をご紹介します。
*この情報は2018年調査時点でのものとなりますのでご承知下さい。
世田谷区内に震災対策用民間協力井戸は人口90万人に対して約2000箇所
杉並区内にある民間協力井戸は人口56万人
に対して約850箇所
練馬区内にある民間協力井戸は人口74万人
に対して約500箇所となります。
昔ならわかるけど、いまどき井戸??ってお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、練馬区には民間の井戸が人知れずまだまだたくさんあります。
阪神淡路大震災以降、新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震といった天災がおきて、被災者の皆様が断水で苦しみ、井戸に救われている姿をみるたびに多くの都民の防災意識が高まっています。
防災井戸として
新しく井戸を掘ったり、古井戸を再生しようといった動きが増えています。
ご相談は、個人から法人まで様々です。
例えば、
①神社仏閣
②学校
③幼稚園
④ホテル
⑤タクシー会社
⑥バス会社
⑦農家
⑧銭湯
⑨建築会社(こちらは資材置き場として)
⑩クリーニング店
⑪マンション管理組合
⑫個人
防災用としてだけの井戸水活用ではなく、
日常的に井戸水を積極的に活用頂いています。
改めて写真の説明をさせて頂きます。
【昔ながらの井戸】
時代劇に出てくるような井戸ですね。
いわゆる(つるべ井戸)
こうした井戸は都内でもお寺でお目にかかる事があります。
実は、練馬区内のお寺にも残っている場所があります。
【元料亭の庭先にある井戸】
田中角栄目白邸近くにあった元料亭の庭先にある井戸
風情があって素敵ですよね。
【放置されたままの井戸】
こちらはガチャポンと呼ばれた昔の手押しポンプ。
原則毎日利用していないと壊れてしまう事が多く
壊れたまま放置されているケースが多い。
【放置されていた井戸を再生】
〇〇女子大学キャンパス内にある古井戸複数あり。
二箇所に防災用として手押しポンプ設置しました。
学生職員そして、地域のためにと聞いております。
【最近の防災井戸】
個人宅玄関先にある防災井戸です。
ステンレス製・深井戸用手押しポンプを設置しました。
【古井戸再生成功事例】
庭先にあったガチャポンをステンレス製・浅井戸用手押しポンプへ交換しました。
40年以上前から放置されていた井戸。
水があるかどうかすら、わからない状況で調査依頼がありまして
湧水確認が出来たので、防災井戸として地域の役にもたてるようにと古井戸再生を決断。
クラウドファンディングを使って
手押しポンプを設置することになりました。
【建替え時に井戸を潰さないで下さい!!】
建て替え時に井戸を守る前提で設計したケースです。
ガレージ内にある井戸を防災井戸として手押しポンプを設置し、
電動ポンプを併設して散水等に利用しています。
建て替え時に井戸を埋めてしまうケースはとても多いです。
【園児や職員、地域のために防災井戸へとリニューアル工事】
西麻布にある若葉会幼稚園様。井戸水を園庭に散水利用していたところ、
災害時に子供達やスタッフ、更に地域住民のために停電時にも井戸水が使えるように
防災井戸として既存水中ポンプを手押しポンプ併設ポンプへと交換。
【マンション管理組合様からご依頼頂いた防災井戸工事】
*大規模分譲マンション敷地内に防災井戸を設置。井戸の深さは40m
日常的には散水用・灌水用として利用。災害時には生活用水として利用する予定です。
【境内に複数ある古井戸再生工事】
こちらは南大泉の妙福寺様。
境内に古井戸がいくつかあった場所のひとつへ水舎をつくるにあたって
ステンレス製手押しポンプを設置し再生しました。
普段は、お墓参りの際のお水として。災害時には、非常用水として利用します。
神社仏閣での井戸工事は多数ご依頼頂いております。
【地域防災協力事例】
三幸プロパティマネジメントサービス㈱様と
瀧島ビル様とが相互協力しあって、災害時に井戸水を確保する訓練を試みた様子です。
瀧島ビル様の地下機械室にある井戸。停電時を想定して
三幸プロパティマネジメントサービス様に発電機をご用意して頂き、揚水試験を実施。
隣接する事業者同士が防災協力をする事例です。
当社は
昭和8年井戸屋とした創業時の
祖父仁三郎から
先代である父平八郎、そして三代目である私と続く
『東京都内、練馬区内の井戸を守る』といった使命感を胸に
井戸工事を通じて地域貢献させて頂けることに感謝し
地域のためにお役に立てる事業をこれからも継続していきたいと考えています。
令和4年3月28日 東京練馬西ロータリークラブ卓話 ホテルカデンツァ東京にて